80歳女性のDさん。娘さんは遠方にいるため、一人暮らしをされていました。地域のサロンや学区福祉委員会さん主催の公園サロン等、お出かけもよくされる生活を送られていました。しかし、腰椎を圧迫骨折したことをきっかけに、外出の頻度が減るようになってしまいました。物忘れも頻繁になっていると感じた娘さんは、地域包括支援センターに相談。要介護認定を受けるようアドバイスを受けると同時に、物忘れについても受診を勧められ、結果、軽度認知症と診断されました。初めての要介護認定の結果は要支援2でした。主治医と連携して通所介護と訪問介護の利用を検討されます。週1回の通所介護と、週1回の訪問介護。そして、以前から利用していた地域のサロンを引き続き利用しながら、様子を見つつ生活をすることになりました。しばらくすると、物忘れも徐々に進み、認知症上の進行も見られてきたため、認定の見直しを行いました。そして、要介護1の認定結果が出ました。
地域包括支援センターから居宅介護支援事業所のケアマネジャーによるプラン作成と相談により、通所介護や訪問介護、訪問看護ステーションの支援、ゴミ収集福祉サービス等の支援を受けながら、在宅生活を継続されていました。しかし、Dさんはまた、自宅で転倒骨折して入院されます。治療後、介護老人保健施設に入所してリハビリを行いましたが、認知症状の進行もあり、今後の在宅での生活は困難と判断されました。そのため、グループホームへのご入居を想定した生活リハビリへと切り替えを行いまして。歩行器での歩行が可能な状態にまで回復され、無事にグループホームにご入居されたものの、やはり長年住み慣れた家のこと気にかかるDさん。グループホームに入居されてからも、「何で私はここに居るの?」「どうやって帰ったらいいの?」と不安な訴えが見られました。時間が経つにつれ、周りに人が居ることの安心感や、調理・洗濯等の活動への参加で、笑顔で過ごされる時間も増えてきましたが、「階段に葉っぱが溜まってないかしら」とご自宅を心配するご様子は依然として継続していました。
そこで、定期的に自宅に戻ることができる機会を作るようにしました。 グループホームでより安心して過ごしてもらうためには、「自宅を忘れてもらう」ケアではなく「いつでも自宅に行ける」ことでの安心感を持ってもらえることが大切です。 そうすることでDさんは、グループホームでの活動に今までより熱心に参加され、「何か手伝いましょうか?」と自ら言ってくださることが多くなりました。 「ここに居てもいいんだ」という思いも生まれ、Dさんにとって、グループホームが自宅と同じくらい、安心できる場所になってきているように感じます。